栗の加工品を製造販売する当社は、原料の栗がないと何も製造できません。また、製品の品質も原料の品質によって大きく左右されます。
製品の生命線である原料だけに、原料産地選定のロジック、コスト・品質を獲得するための具体的アプローチ等、原料調達については詳細をご説明する必要があります。
情報量の多いページになってしまいましたが、是非、ご一読下さい。
栗甘露煮に50年間携わってきました。50年の結論として、原料(むき栗)調達においてユーザー様のニーズに応える要諦は、下記の通りであると考えます。

それぞれの詳細について、下記に順を追ってご説明いたします。
適正コストで安定供給、というユーザーニーズに対しては、1)収穫量、2)コストが重要であることを挙げました。この2点について、韓国産栗と国産栗を比較しながら韓国産栗の優位性を説明したいと思います。
韓国産栗は、元々は、1960年代後半以降に日本より持ち込まれた品種(銀寄、筑波等:これらは甘露煮に適した品種でもあります)です。栗園(栗の木畑)の運営ノウハウも、これらの日本品種の苗木と共に韓国に持ち込まれ、韓国でも栗の栽培が本格的に始まったという経緯がございます。
また、日本と韓国は地理的にも近いことから、日照時間や気候など栽培環境も近似しております。これらの理由により、韓国産栗と国産栗の間において品種面での品質に差異はありません。
| 品種 | 品種名 | 収穫時期 |
|---|---|---|
| 極早生種 | 奥多摩早生など | 8月下旬頃 |
| 早生種 | 森早生・丹沢など | 9月初旬~9月中旬頃 |
| 中生種 | 筑波・有磨・玉光など | 9月中旬~9月下旬頃 |
| 晩生種 | 銀寄・利平など | 9月下旬~10月初旬頃 |
韓国での収穫量は日本の約3倍(表3~5参照)となっております。
メーカーである我々が、より大きな収穫量から享受できるメリットは、下記の3つとなります。
次に韓国産栗のコストですが、韓国産栗のKg当り単価を1とすると、同等サイズの国産栗は3前後となり、約3倍の価格差があります。
・原料調達時期の米国ドル⇔韓国ウォン⇔日本円の為替レートにより決定されるものであり、
今後の為替相場の動向次第で、価格は変動する可能性があります。
・農協手数料や運賃も、農協や剥皮加工拠点先によっても多少異なってきます。
・サイズ帯別の収穫量、各サイズ別への引き合いの強弱によっても多少異なってきま す。
| 地域 | 主産地 |
|---|---|
| 忠清南道 | 公州・扶余 |
| 慶尚南道 | 河東・晋州・晋陽・咸陽・泗川・固城・山清 |
| 全羅南道 | 光陽・順天・宝城・淳昌・昇州・求礼 |
| 地域 | 忠南 | 慶南 | 全南 | 忠北 | 全北 | 慶北 | その他 | 韓国計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2008年 | 28,141 | 24,495 | 11,222 | 4,988 | 4,111 | 842 | 1,372 | 75,171 |
| 2009年 | 29,118 | 22,844 | 12,201 | 5,066 | 4,495 | 766 | 1,421 | 75,911 |

出所: MKトレーディング(株) ご提供資料より作成
| 地域 | 茨城 | 熊本 | 愛媛 | その他 | 日本計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2008年 | 6,110 |
3,680 |
2,390 |
13,120 |
25,300 |
| 2009年 | 4,740 |
3,130 |
2,300 |
11,530 |
21,700 |

表5、韓国・日本産地別収穫量

出所: MKトレーディング(株) ご提供資料より作成
生の原料を使用する栗甘露煮は、製造技術以前に原料の鮮度と品質が、非常に重要となります。状態の良くない素材にいくら手を加えても、良い品物は決して作れません。
韓国で収穫された栗をどこで剥皮するか?品質・コストの観点より中国に剥皮加工を委託している理由を説明致します。
栗甘露煮は、丸みを帯びつつも角ばった独特な形状をしております。この形状に渋皮を剥く剥き方をダイヤモンドカットと呼びます。当社も、このダイヤモンド状にカットされたむき栗を、甘露煮用の原料として購入します。


栗も農産物ですので、個々の形状は異なっております。そして、この剥き方(ダイヤモンドカット)の特殊性もあり、剥き作業(剥皮作業)はいまだに機械化されておらず人の手で剥くしかないのです。
韓国で収穫される栗だけに、当然、剥皮作業も韓国内で完結させることが出来ればベストです。然しながら、90年代を通じて、韓国においても経済環境の変遷や賃金上昇に伴い、人手の確保が年々困難になる状況が続いておりました。そして、ついには2003年を境に剥皮作業の中国シフトが急速に進行し始めたのです。
産地 |
韓国産栗 |
日本産栗 |
合計 |
||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
剥皮国 |
韓国剥皮 |
中国剥皮 |
小計 |
中国剥皮 |
|||
単位 |
トン |
% |
トン |
% |
トン |
トン |
|
2002年度 |
5,780 |
82.7% |
1,210 |
17.3% |
6,990 |
10 |
7,000 |
2003年度 |
3,060 |
57.8% |
2,230 |
42.2% |
5,290 |
250 |
5,540 |
2004年度 |
1,730 |
30.7% |
3,900 |
69.3% |
5,630 |
70 |
5,700 |
2005年度 |
1,310 |
27.2% |
3,500 |
72.8% |
4,810 |
50 |
4,860 |
2006年度 |
915 |
20.0% |
3,655 |
80.0% |
4,570 |
180 |
4,750 |
2007年度 |
800 |
18.6% |
3,500 |
81.4% |
4,300 |
200 |
4,500 |
2008年度 |
748 |
17.5% |
3,517 |
82.5% |
4,265 |
595 |
4,860 |
2009年度 |
805 |
22.1% |
2,845 |
77.9% |
3,650 |
410 |
4,060 |
2010年度 |
611 |
19.1% |
2,587 |
80.9% |
3,198 |
420 |
3,618 |
出所: MKトレーディング(株) ご提供資料より作成
日本での消費低迷もあり、韓国産むき栗の輸入全体量(表6-1、韓国産栗・小計の値を参照)も、同期間中に減少しておりますが、輸入量全体に占める中国剥皮の割合は17.3 %から80.9%へと5倍強に増えております。
表6-2、【概算】韓国産むき栗輸入量の推移
出所: MKトレーディング(株) ご提供資料より作成
剥皮加工の中国シフトは、剥皮作業に従事する労働者の賃金、そして人手(労働者の数)が主な理由となります。剥皮加工の拠点先として、中国と韓国・日本を比較しますと、大まかに下記の表のようにまとめることができます。
|
剥皮国 |
中国 |
韓国・日本 |
|---|---|---|---|
1 |
作業者(人手) |
有るが今後より困難に |
既にかなり困難 |
2 |
一日一人当り剥皮量 |
10~12kg |
3~5kg |
3 |
作業賃 |
中国加工の作業賃/Kgを1とすると、日本の作業賃/kgは10 |
|
4 |
作業環境(工場設備) |
専用工場 |
小規模加工場 |
・収穫後の9~12月だけが労働期間となる季節産業であることも、人手確保を難しくしている要因です。
・中国でも出来高性での報酬形態となっておりますが、農村出身の若い作業者が、週6~7日、朝から晩まで作業しております。
・農産加工に限らず他の製造業においても、中国の工場がハード・設備面において日本より優れている事例は多々あるかと思われます。
・以上のような背景もあり、国産栗であっても、渋皮の剥皮加工のためにわざわざ中国に輸出しているものが一部あります。(※表6、日本産・中国剥皮の値を参照。)
むき栗のコストについてのまとめです。
この二項の合計が、当社の仕入れるむき栗のコストとなります。下記の表をご覧ください。
|
【原料産地】・【渋皮剥皮国】 |
|||
|---|---|---|---|---|
組み合わせ |
韓国・中国 |
韓国・韓国 |
日本・中国 |
日本・日本 |
むき栗コスト |
1 |
1.1~1.2 |
1.7 |
3 |
剥皮加工は人の手に依存した典型的な労働集約型の加工であり、コストを考えた場合、表7と8が示す通り中国の安価な人件費に依存せざるを得ないのが実情です。
次に、むき栗の鮮度・品質についてのまとめです。
表7からは、むき栗の重要な品質ポイントも導きだすことが出来ます。韓国・日本と、中国とを比較しますと、韓国・日本の方が、
また、
となります。
この2点を掛け合わせますと、
となります。出来高が少ないと、大量処理が必要な剥き作業が、【長期化】します。
むき栗は、生の原料ですので、
必要十分な人手により、剥皮加工を迅速に且つ大量に処理できる。結果、むき栗の鮮度・品質が担保される。これが、剥皮加工を中国工場に委託する理由となります。
以上、品質・コストの観点より、剥皮加工を中国の指定工場に委託している理由を述べました。
前述しました原料の収穫は韓国、剥皮加工は中国工場委託、という2つの要素は、原料調達チャンネルを通じて一気通貫で処理されなければなりません。
韓国では、大量の原料を買い付けます。一方で、農家が収穫し、地場の農協加工場に栗を搬入する期間、即ち原料の買い付け期間は、正味9月の1ヶ月程しかありません。下記の表8に、当社指定産地の一つである山清農協への9月の日別入荷量推移を示します。
表9、山清農協への日別入荷量

出所: 山清農協提供資料より作成
いくら人手を有する中国の工場と云えども、これだけの大量の原料を、同じ9月内に全量処理しきることは出来ません。ですので、中国の工場は、自社での剥皮加工の進み具合に合わせて、冷蔵コンテナ単位で原料を中国に輸入します。また、原料は中国に輸出されるまでは、韓国の各農協加工場の冷蔵庫に保管されます。
然しながら、生原料である限り鮮度・品質が劣化する前に、早く中国で剥皮加工を行い、そして日本の当社工場まで搬入し半製品に加工しなければなりません。当社、中国の指定工場、そして輸入商社の3社が一体となり、9月中旬~12月中旬までの4ヶ月間に、一年分の需要に相当する全てのむき栗をまさに一気通貫で加工していくのです。
また、栗を韓国⇒中国⇒日本、へと輸送する物流経路の概略は、下記図の通りとなります。
収穫から加工までを一気通貫で行いますが、原料の安全性確保にもしっかり取り組んでおります。取り組みの概略を下記にご説明致します。
農薬の使用状況など収穫までの一連の栽培作業を調査したものです。調査は公の機関である韓国農林食品輸出入組合が実施し、報告書という形式にて取得します。
残留農薬について502項目にわたって検査し、検査結果を証明書として取得します。
の二段階で検査を実施しております。
原料産地にまで遡って生産履歴が確認可能なトレーサビリティ体制を、中国協力工場、輸入商社、当社の3社間にて運用しております。
原料受入時の受入検査から始まり、各製造工程および出荷前の検査まで、一貫した管理体制にて安全を確かなものとしております。各工程の主要な管理項目は、こちらのページをご確認下さい。

以上、詳細をご説明させて頂きました当社の原料調達方針は、韓国・中国とは不可分の関係となっておりますが、将来的な見通しにおいて懸念事項が無いわけではありません。
かつて日本が通った同じ道、韓国の農家も高齢化が進んでおります。中国でも人手の問題含め賃金上昇が今後進行していくことは確実視されております。然しながら、当社の製造技術だけでは、高品質の栗甘露煮は製造することができません。韓国の産地、中国の協力工場、輸入商社等、各社の協力があってこそ当社の製品が出来るのです。
今後も製品の品質を維持・向上させつつ、お客様に製品を安定供給していけるよう、原料仕入ルートの維持および強化に努めて参りたいと思います。



まずは水漬けタンクに一時保管

その後、サイズごとに選果し容器に詰めます。


出荷まで冷凍保管されます

最後に中国に向けて冷凍コンテナで出荷されます
